メカトロニクス

バックドライバブルかつロバストなモータ制御

人型ロボットに限らず、外界と頻繁に衝突・接触することで作業を行うロボットには、外界から受けた力とモータ駆動力が直接的に相互作用できる性質が重要です。 これはバックドライバビリティと呼ばれます。 数百円程度のセンサでこれを実現する技術を開発しています。

【参考文献】

  • 石川省吾, 西尾政紀, 杉原知道, フィードフォワード摩擦補償と外トルク計測を併用した安価なバックドライバブルモータ制御, 第19回ロボティクスシンポジア, 有馬グランドホテル, 2C3, pp.171-176, 2014. 3.15.

※本研究は、公益財団法人立石科学技術振興財団平成24年度研究助成金の支援を受けました。

バックドライバブルになった関節は、替わりに重力や負荷変動の影響が顕れやすくなり、角度の制御精度や収束性が低下するという弊害もあります。 重心や手先のレベルで設計された制御器が効果的に働くためには、メゾ力学によってそれらから逆算された通りに、モータを精度良く制御しなければなりません。

重力や負荷変動、残留摩擦をロバストに補償する(打ち消す)ことが必要です。 これは制御器の中に積分補償器を含めることで可能になるのですが(大西1987、金子ら1991)、積分補償は、飽和の影響で誤差を蓄積し、系を不安定にしやすいことが知られています。 ロボットアームではよく知られた問題で、解決方法も多く提案されていますが(Horowitz 1980、Hanusら1987、Doyleら1987、Edwardsら1998)、飽和を監視するために大型のセンサを必要とするものでした。 人型ロボットには大きなセンサを何個も載せることはできません。

本研究では、飽和したら自動的にリセットするような安全な積分補償器をモータへの入力信号生成器自体に埋め込む方法を提案しています。 通常は摩擦等を補償するためにロバストに振る舞い、過大な外乱に対しては安全性を優先します。 この方法の良いところは、ソフトウェアだけで実装されるので、小型で安価なモータドライバにも容易に導入できるということです。

【参考文献】

  • 杉原知道, 目標値整形による簡単かつ安全な積分補償を導入したモータ制御, 日本ロボット学会誌, Vol.27, No.8, pp.910-916, 2009.
  • 杉原知道, 中村仁彦, PD制御-2自由度制御のカスケードによる多関節ロボットのロバスト関節サーボ系設計, 第24回日本ロボット学会学術講演会, 岡山大学, 2006.9.

高精度位置・姿勢推定

移動ロボットの制御において、空間中で現在どのような姿勢なのか精度良く推定することは重要です。 通常これには角速度センサ(レートジャイロ)や傾斜計が使われるのですが、前者は姿勢を知るために積分演算を要求し、その際にわずかな誤差も一緒に積分して拡大してしまいます。 一方後者は、(一般的に静止状態での傾きを知るためのもので)応答が遅く、そのままでは高速な運動制御には使えません。 両者をうまく組み合わせられれば良いのですが、人型ロボットのような脚ロボットの運動は、ちょうどどちらのセンサも精度が劣化する周波数帯の成分を多く含みます。

本研究では、それぞれのセンサの特性を補償する演算を施した後に両者を周波数領域でうまく重ね合わせます。 姿勢は空間内で三次元的に変化するので、センサの特性を同定するのは簡単ではないのですが、特に座標変換による影響とセンサの動的特性(遅れやドリフト)を分離して扱うことで、これを比較的容易にできます。

【参考文献】

  • 杉原知道, 舛屋賢, 山本元司, 三次元高精度姿勢推定のための慣性センサの線形・非線形特性分離に基づいた相補フィルタ, 日本ロボット学会誌, Vol.31, No.3, pp.251-262, 2013.

Copyright (C) Motor Intelligence Lab, Osaka University Since 2010