ロボットの行動設計

二脚ロボットの軌道計画

ある程度複雑な作業を行う際、体のおおまかな動かし方を前もって計画しておくことは有効です。 ロボットの運動制御で述べたように、運動は好き勝手に計画できません。 その反作用として受ける外力に制約条件が課されることは、ここでも同様です。

ロボットの運動を重心-ZMPモデルで表現した場合、この問題は、所定の場所からある別の場所へといたる重心軌道と、支持領域に常に収まるZMPの軌道とを同時に求めることが目的になります(呉松ら1988、梶田ら1991、倉爪ら2003、長阪ら2004、原田ら2005)。 片方をきっちりと守ろうとすると、もう片方に必ず影響が及ぶので、動きを緩慢にして影響を抑えるか、何歩分かの軌道を前もって計画するかして辻褄を合わせるのが従来の方法でした。

本研究で提案する境界条件緩和法は、どちらもほどほどに満たし、どちらもほどほどに諦める代わりに、一歩分の軌道を即座に計画しようというものです。 これによって急な動き出し、急停止などを含むきびきびとした運動がオンラインで行えるようになりました。

【参考文献】

  • T. Sugihara and Y. Nakamura, Boundary Condition Relaxation Method for Stepwise Pedipulation Planning of Biped Robots, IEEE Transaction on Robotics, Vol.25, No.3, pp.658-669, 2009.
  • 寺田耕志, 杉原知道, 國吉康夫, 境界条件緩和と運動方程式の力学的三次元対称化による二脚ロボットのオンライン運動計画法, 第25回日本ロボット学会学術講演会, 千葉工業大学, 2007. 9.
  • 杉原知道, 中村仁彦, 二脚ロボットの3次元跳躍運動計画のための境界条件緩和法拡張, 第12回ロボティクスシンポジア, pp.190-195, 長岡市蓬平温泉, 2007.3.
  • 杉原知道, 中村仁彦, 境界条件緩和法による2脚ロボットのオンライン運動計画, 日本ロボット学会誌, Vol.25, No.7, pp.1082-1091, 2007.
  • 杉原知道, 中村仁彦, 境界条件緩和による二脚ロボットのオンライン歩容計画法, 第10回ロボティクスシンポジア, pp.153-158, 箱根小湧園, 2005. 3. 第10回ロボティクス・シンポジア最優秀論文賞日本ロボット学会第21回研究奨励賞受賞

人型ロボットのインタラクティブ動作設計

ロボットに関する専門的な知識を持たない人でも、作業と動作を直感的に関連付けられることが、人型ロボットの最大のメリットです。 一方、運動は好き勝手に設計できません。 運動計算では力学的制約について説明しました。 そのほか、例えば腕が胴体にめりこんだりしないか、地面から足が浮いてしまってないか、といった幾何学的制約も重要です。 できれば動作設計者に、そのような厄介さを感じさせず好きな動作を作ってもらいたい。 そのためのツールを提供することが、本研究の目的です。

大掛かりでロボットにさせたい動作を人が実際にやってみせなければならないモーションキャプチャや、ダイナミックな動作を設計するのに向かない人形型ポージングデバイスでなく、CGで使われているキーフレームアニメーション、すなわち、幾つかの代表姿勢を補間することにより動作を表現する方法をとります。 代表姿勢の作成には、ロバスト逆運動学を用います。 これはいわば動作の種。 その動作にとって重要なところだけを拘束しながら、様々な制約を満たすよう自動修正できる余地を残していなければなりません。

問題を幾何学的制約に絞ったとき、考えなければいけない問題は3つあります。

    1. 代表姿勢を編集している最中に、手足のめりこみを自動で防ぐ、あるいは環境と自動的に接触させるには?
    2. 同じ動作の中でも、途中の代表姿勢で拘束して欲しい部位はころころ変わる。どう補間する?
    3. 代表姿勢の補間姿勢においても、手足のめりこみや環境へのめりこみを防ぐには?

我々の答えは、次の通りです。

    1. 手足のめりこみや環境へのめりこみが検出されたら、即座にそれを防止する拘束条件を自動挿入する
    2. 動作を通して一度でも拘束される部位を対象に補間軌道を作成し、ただし作成軌道がその軌道に近づいて欲しい度合いを変化させる
    3. 補間姿勢全体で幾何学的制約を満たすよう、軌道の形状を制御する点を自動探索する

【参考文献】

  • 松本恭典, 杉原知道, 人型ロボットのインタラクティブ動作設計における干渉の自動解決, 第31回日本ロボット学会学術講演会, 首都大学東京, 1C3-05, 2013. 9. 4.
  • 松本恭典, 杉原知道, 人型ロボットのインタラクティブ姿勢編集における干渉の自動解決, 日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会2013, つくば国際会議場, 2P1-A11, 2013. 5. 24.
  • 松本恭典, 杉原知道, 人型ロボットのインタラクティブ動作設計における運動拘束条件の自動整合, 日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会'12, アクトシティ浜松, 1A2-O04, 2012. 5. 28.

力学的制約は、基本的には上述の境界条件緩和法と同様の考え方でアプローチできるのですが、単に脚で移動するだけでなく、全身を使った動作となると考えるべき事柄が増えます。 特に人ののびやかな動作をそのままロボットで再現しようとしたとき、逆運動学が解を持たなくなる状況にしばしば陥ります。 ロバスト逆運動学を使えばこの問題はそれほど深刻でなくなるのですが、力学的制約まで考慮すると前後の姿勢との関係、速度や加速度の滑らかさが重要になります。

これらの事柄まで考慮し、動作にとって重要なところは変えないまま、適宜拘束条件を自動的に追加したり削除したりする方法を開発しました。 上のアニメーション、左は従来の(逆運動学が常に解を持つような姿勢を維持する)方法で設計した歩行動作、右は本研究で開発した方法で設計した動作です。 踵から地面について爪先が最後に地面から離れる、人のような動作となっています。 これは決して、足先の詳細な軌道の作りこみや逆運動学が解けなくなったときの例外処理によって設計されたものではありません。

【参考文献】

  • 田中健也, 杉原知道, 運動学的制約の限界でも力学的制約を満たす人型ロボットの運動設計, 第19回ロボティクスシンポジア, 有馬グランドホテル, 5D1, pp.485-490, 2014. 3.16.

※本研究は、公益財団法人栢森科学技術振興財団第16回研究助成金(課題番号:K23研XVI第355号)の支援を受けました。

人型ロボット経路計画

私たちが生活している複雑な環境内でのロボットの運動を計画するとき、重心と足だけでなく、全身を巧みに操って障害物を避けながら目的地にたどり着くことを考えなければなりません。 ロボット身体や障害物の形状に因る複雑な幾何学的制約条件と、依然課せられる反力への制約条件を同時に満足する軌道を計画する必要があります。 ロボットの軌道計画問題としては最も難解なものの一つです。

大規模で複雑な経路探索問題では、PRM(Probabilistic Roadmap Method, Kavrakiら1996)やRRT(Rapidly-explored Random Tree, Kuffner&LaValle 2000)といった確率的方法が効率的な解法として提案されています。 人型ロボットの軌道計画に応用した例も多くあります(Kuffnerら2000、Yoshidaら2005、Hauserら2005、原田ら2007)。 しかし、確率的方法によって求まる一次経路は大抵ぎざぎざで、そのままでは使えません。 実用上は滑らかな二次経路へと修正してやる必要があります。 もちろん、制約条件の下でです。

本研究では、支持状態の遷移、およびそれらを補間する全身関節変位の連続軌道に対し上記の修正を行う、時空間フィルタリングの技術を提案しています。

【参考文献】

  • T. Nishi and T. Sugihara, Thinning and Smoothing of Randomply-sampled Support Transitions Toward Practical Motion Planning for Humanoid Robots, 2010 IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems, pp.1702-1707, Taipei, Oct, 19th, 2010.
  • 西俊哉,杉原知道, ランダムツリーの間伐・平滑化による複雑環境内での人型ロボットの運動計画, 第15回ロボティクスシンポジア, pp.397-402, 吉野山, 2010. 3.16.

上記の確率的方法は、複雑に込み入った障害物密集度の高い環境では有効なのですが、やはり計算コストは小さくないので、それほど複雑でない(障害物密集度の低い)環境では、できれば前項に記した歩行軌道計画のような、もっと単純な動作パターン生成器を使いたいところです。 では、障害物密集度はどのように見積もれば良いのでしょうか? どういう場面で前者と後者を使い分ければ良いのでしょうか?

このような問題意識の下、本研究では次のような方法を提案しています。 まずロボット身体を大きさ可変な直方体で大雑把に表現し、経路(の候補)を見つけてやります。 その経路のうち、大きな(ロボット身体を包含する程度の)直方体から成る区間は、十分な空隙があるということなので単純な動作パターン生成器を、(ロボット身体を包含できない)小さな直方体から成る区間は、十分というほどの空隙ではないけれどもうまく姿勢を変形してやれば、障害物を跨いだりくぐったりして通り抜けられる可能性があるので確率的方法をそれぞれ使い、改めて全身の経路を計画してやります。 このようにして、コストの高い方法を使う区間を最小限に抑え、様々な環境で現実的な時間で経路を発見するわけです。

例えば上記のような大規模プラント内を、自律的に移動し作業することも可能になります。

【参考文献】

  • Yasushi Shimizu and Tomomichi Sugihara, Efficient Path Planning of Humanoid Robots with Automatic Conformation of Body Representation to the Complexity of Environments, 2012 IEEE-RAS International Conference on Humanoid Robots, pp.755-760, Osaka, Dec. 1st, 2012.
  • 清水康志, 杉原知道, 人型ロボットの段階的経路計画に伴う小範囲干渉の局所的解消, 日本ロボット学会第30回記念学術講演会, 札幌コンベンションセンター, 4K3-8, 2012. 9.20.
  • 清水康志, 杉原知道, 環境の複雑さに応じた身体表現の自動適合による人型ロボットの効率的運動計画, 日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会'12, アクトシティ浜松, 1A2-N03, 2012. 5. 28.

二脚ロボットの操縦

人型ロボットの一つの利点は、人に近い身体を活かし、臨場感を持って沿革作業を行えることです。 操縦者は、使い慣れた自分の身体の延長としてロボットを利用することができます。 ただし、操縦者とサイズも、また得られる感覚も異なるロボットを操るのは、それほど簡単なことではありません。

ロボットの持つ多数のモータを操り様々な動作をさせるためには、一般的に、操縦デバイスも同じくらい多数の入力を持たなければいけません。 しかし、そんなに多数の入力を同時に操作するのは難しいことです。

本研究の目的は、操縦が簡単で、しかも動作の豊富さを損ねないようなシステムの開発です。 市販のゲーム用コントローラ(同時入力数5〜6程度)を使い、入力の割り当て先となる身体部位(手や足)を、動作を中断することなく切り替え、リアルタイムに運動合成する方法を提案しています。

【参考文献】

  • T. Sugihara and H. Kobayashi, A Handy Humanoid Robot Navigation by Non-interruptive Switching of Guided Point and Synergetic Points, 2008 IEEE-RAS International Conference on Humanoid Robots, pp.640-645, Daejeon, Dec., 3rd, 2008.

人型ロボットを、操縦者が無造作に指令した進行方向や場所にちゃんと到達させるのは、実は意外に難しいことです。 胴体の動きと両足の動きは矛盾しやすく、無策に誘導すると両足がぶつかったり絡まったり開き過ぎたりと、容易に破綻します。

本研究では、ロボットの現在地から目的地に向かって敷いた仮想的なレールに従い、両足の位置関係が常に破綻しないことを保証しながら、目的地へと誘導する方法を提案しています。

【参考文献】

  • H. Kobayashi and T. Sugihara, Self-consistent Automatic Navigation of COM and Feet for Realtime Humanoid Robot Steering, 2009 IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems, pp.3525-3530, St.Louis, Oct, 13th, 2009.

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